噛んで、DESIRE



楽しんでいる。

わたしの反応を見て、笑っている。


吾妻くんは、どうしてそんなに余裕なのだろう。

わたしの心臓はなぜかこんなにも、壊れそうなのに。


「じゃあ、なんでそんな顔してんの?」


どんな顔か、わからない。

どうしよう、このままじゃ、メデューサもとい吾妻くんに石にされてしまう。


動けないくらい、魅了されてしまうかもしれない。


考えれば考えるほど居ても立っても居られなくなって、勢いよく席を立った。


「あ、怒った?」


にこっと微笑んだ吾妻くんは、怒っていたら怒りが薄れてしまうほど美しい。

彼を例えるならば、見た目は美しい花。

だけど……その正体は、猛毒なのかもしれない。



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