噛んで、DESIRE



「……お皿、片付けます」


まともに関わるから駄目なんだ。

もう、吾妻くんのことなど忘れよう。


空気のように扱えば良いんだ。

そうでもしないと、意識しすぎておかしくなってしまう。


吾妻くんが完食してくれたお皿を回収して、洗い物をする。

それなのに、一刻も早く離れたかったから洗い物を始めたのに、彼はわざとか否か隣に立ってくる。



「な、何しに来……」

「拭く」


はい、と布巾を持って手を出されて、躊躇する。


だって、吾妻くんらしくなくて、びっくりしてしまう。

そう思うけれど、そもそもわたしは彼のなにを知っているのだろうか。

わたしは吾妻くんのことを、ぜんぜん知らない。



「お客さんなので、……座っていてくださいよ」

「んー? 美味しかったから、少しくらい労働するよ」


「……そ、うですか」




< 41 / 320 >

この作品をシェア

pagetop