噛んで、DESIRE
「……お皿、片付けます」
まともに関わるから駄目なんだ。
もう、吾妻くんのことなど忘れよう。
空気のように扱えば良いんだ。
そうでもしないと、意識しすぎておかしくなってしまう。
吾妻くんが完食してくれたお皿を回収して、洗い物をする。
それなのに、一刻も早く離れたかったから洗い物を始めたのに、彼はわざとか否か隣に立ってくる。
「な、何しに来……」
「拭く」
はい、と布巾を持って手を出されて、躊躇する。
だって、吾妻くんらしくなくて、びっくりしてしまう。
そう思うけれど、そもそもわたしは彼のなにを知っているのだろうか。
わたしは吾妻くんのことを、ぜんぜん知らない。
「お客さんなので、……座っていてくださいよ」
「んー? 美味しかったから、少しくらい労働するよ」
「……そ、うですか」