噛んで、DESIRE
洗い終えたお皿を渡せば、吾妻くんはつまらなさそうに拭いてくれる。
似合わない行動が、嬉しかった。
髪も濡れてすとんと落ちているから、雰囲気も丸くなっている気がする。
「…………でも、ひとつ良いですか。吾妻くん」
「え、なに」
非常に言いにくい……。
おそるおそる手を伸ばして、すぐそばにある機械を指差す。
「食器乾燥機あるので……拭かなくても、大丈夫なんです」
「…………それを早く言おうか? 杏莉ちゃん」
真っ黒な笑みを浮かべた吾妻くんに、悔恨の視線を向け続けられたのは言うまでもない。