噛んで、DESIRE
吾妻くんはこうやって、いろんな女の人を落としてきたのだろうか。
……そうだ、きっとそう。
危うく棘に気付かずに近づけば、とんだ痛い目を見るのだ。
吾妻くんは、恋の相手には駄目な人。
別にわたしも、好きになんてなるはずない。
「でも吾妻くん……ソファで寝るなんて似合わないです」
「なに、どういうこと」
少し含み笑いをこぼしながら、首を傾げて尋ねてくる吾妻くん。
ぜったいまたバカにしてる……と思いながら唇を尖らせて抗議する。
「とにかく! わたしはソファで寝ます」
このままでは埒があかない。
わたしがお風呂に入ってから約10分、この攻防戦を続けている。
そろそろ終わらせたいために急いでソファを占領すれば、吾妻くんは口角を下げた。