噛んで、DESIRE


もちろんおとなしくベッドに再度ダイブし、やっぱり目に猛毒な彼からは視線を逸らす。


「杏莉ちゃんって、すぐ目逸らすね」


はは、と楽しそうに笑っている吾妻くんは、わたしのお腹から腕を退けようとしない。


「……手、離して、ください」


慣れていないわたしは、カタコトで、声を震わしながら反抗することしかできない。

男の人に触れられる経験がないから、どうしたらいいのかわからない。


吾妻くんは、きっとそんなことなんてお見通し。

そのくせして、知らないふりしてからかってくる。



「いいじゃん、別に」

「……なにもしないって、言ってました」


「んー? まあちょっと、気が変わった」

「意味わからない、です……」



だから、この人はキケンだ。

触れてはいけない、ぜったいに。




< 47 / 320 >

この作品をシェア

pagetop