噛んで、DESIRE
吾妻くんは平然とした顔で、シーツの上に広がっているわたしの髪をさらりと撫で、指に絡めて遊び出す。
「杏莉ちゃんの髪、俺と同じ匂いしてる」
「……だって、同じシャンプー使ってます、から」
「そーだね。あと、ベッドからも杏莉ちゃんの匂いする」
「…………だって、わたしのベッド、ですから」
これ以上彼に近づいてはいけないと、頭の中で警報がなっている。
危険度で言えば、すでにMAX。
わたしの鼓動も、びっくりするくらいうるさい。
つまらなさそうにわたしの髪をずっと弄っている吾妻くん。
それに飽きたのか、彼は突如視線をこちらに向けてきて言う。
「なんか俺、うっかり手出しそうなんだけど、どーしたらいい?」
ぜったいそんなこと、美麗に微笑んで言うことじゃない。
ありえない、そう思うのに。
弱々しい声しか出ないわたしは、すっかり吾妻くんの猛毒が回っている。