噛んで、DESIRE



「は、離してください……っ」


おかしい、こんなの。

だってわたしと吾妻くんは、ただのクラスメイトなのだから。


今夜は違う、イレギュラー。

こんなことになるなら、家に上げてなんかいなかった。


ぐぐぐ、と両手で吾妻くんの胸板を押す。

それなのに、どうしてか彼はびくともしない。


「なにそれ、抵抗してるつもり?」


にっと笑って、吾妻くんは片方の手で髪をかき上げた。

さらりと金色の髪が彼の目にかかり、さらに色気が増して苦しい。


……ああ、もう、意地悪だ。

それなのにわたしは、まんまと罠に嵌っている。


いや、もしかすると……自ら嵌ろうとしているのかもしれない。






< 50 / 320 >

この作品をシェア

pagetop