噛んで、DESIRE
「んー? やっぱり杏莉ちゃんは男をわかってねえなあ」
楽しそうにそう言い、吾妻くんは笑った。
わたしの髪を気まぐれに梳き、ふわっと小さくあくびをする。
わたしはこんなに緊張しているのに、この人はすっかりリラックス状態。
そんなの狡い。
だけど彼のそんな態度のおかげでこちらも気が抜けてしまうのだから助かってしまう。
「……じゃあ吾妻くんは、胸を張って自分は誠実って、言えますか」
ムッとした声でそう尋ねたわたしに、吾妻くんは面倒そうな口調で返す。
「さあね、まあ人並みには?」
「もう、本当ですか……」
「少なくとも、いまの俺はいつもの俺より誠実だと思うけど」