噛んで、DESIRE
「それは……、そう、ですか」
「はは、照れてんじゃん」
「照れてないです」
「真顔やめて?」
吾妻くんはケラケラと笑ってる。
こっちは、ぜんぜん嬉しくない。
いまの言葉を裏返すと、いつもは軽く手出しちゃうってことだもの。
そんなことを考えてしまうわたしはきっと面倒くさい女。
吾妻くんと関わるのは今日限りなのに、深入りしすぎていると思う。
だめだって思うほど近づいちゃうのは、美麗な彼のせいで、わたしのせいじゃない。
「ね、杏莉ちゃん」
なんでもなさそうに声をかけてくる吾妻くんに、わたしも同じように素気なく返す。
「何ですか」
「いや、なんか噛みたいなって」
「…………はい?」
「噛んでいい?」