噛んで、DESIRE
おもしれーおもしれーと肩をさらに揺らす彼に、わたしは拗ねたような表情を浮かべることしかできない。
吾妻くんは、思ったよりもよく笑う。
黙っていたら彫刻のように綺麗だけれど、笑っているほうが、うんと雰囲気が柔らかくなる。
ずっと笑っていたらいいのに、と思いながら頬を膨らませていると、やっと笑いがおさまった吾妻くんが目を細めて言った。
「だめ?」
「だ、駄目です」
「お願い、ちょっとだけ」
「……な、んで、噛むんですか、」
そもそも行動がおかしい上に、わたしと彼はただのクラスメイトだ。
今日やっとまともに話したような、浅い関係。
それなのに吾妻くんは、当たり前のように抱きしめてくるのだからズレている。