噛んで、DESIRE
「……遠慮します」
別に、吾妻くんに教えてもらわなくたっていい。
可愛くない反応している自覚はあるのに、どうしたって天邪鬼になってしまう。
だけど吾妻くんはぜんぶわかっているように、わたしの髪をさらりと耳に掛けてくれる。
その手つきが優しくて、苦しくなる。
だって、変だ。
吾妻くんがこんなにわたしに優しくするなんて。
「はは、遠慮しなくていーよ」
「……大丈夫、ですから」
「俺以外を知る前に、忘れられなくしてあげよーな」
「……何、言って、」
もし吾妻くんを止められるスイッチがあったなら、迷うことなくそれを押していたと思う。
だってあまりにも彼の瞳が、妖しく光っていたから。