噛んで、DESIRE



澪子が嘆いたちょうどそのタイミングで予鈴が鳴り、彼女は席へ戻って行った。


となりを見るも、吾妻くんは予鈴が鳴ろうと微動だにしない。


……綺麗な、金髪。

染めてるはずなのに、ぜんぜん傷んでない。


透き通るような柔らかい金色を眺め、いつかこんな髪色にしてみたいなあ……と妄想を膨らませる。


ガラッと教室の扉が開き、担任の先生が入ってくると、彼は驚いたように声を上げた。


「お、今日は吾妻梓来てるじゃねえか」


教室に入るなり金髪の髪が目に入ったのだろう。

彼自身が関わりを絶っているから、クラスのみんなは自分から話しかけようとはしない。

だから、吾妻くんが喋っている姿さえ、あまり見かけないのだ。

先生の言葉に小さく反応して、ゆっくりと吾妻くんが顔をあげたのを横目で見えた。

怖いくらい美麗なお顔に、息を呑む。


何度か見ているはずなのに、まったく慣れない。

猫のような、獣のような、もはや例えようのない美しさに目を奪われる。


教室中の視線を浴びている彼は、薄い唇を開いて言った。




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