噛んで、DESIRE
「おはよ、先生」
くあっと大きくあくびをして、吾妻くんは少し長めの髪をかき上げた。
それだけの動作が、妙にカッコよくて、隣のわたしが勝手にドキドキしてしまう。
そんな美麗な彼を呆れたように見つめた先生は、砕けた口調で彼に言う。
「おはよ、じゃねーよ吾妻。今日も授業寝ようとしてるんじゃないだろうな?」
「いや、寝る」
「お前なあ……3年間担任してる俺の気持ちも少しは考えてくれ? 心労で胃は痛いし禿げそうだし」
「んー、ごめん」
「俺はお前の友達か」
……本当に、友達みたい。
テンポの良い会話を繰り広げ、先生は諦めたように吾妻くんから視線を逸らして連絡事項を話し出す。
ぼーっと先生の話を聞いていると、何やらひそひそと噂話が耳に入ってくる。