噛んで、DESIRE
埋められない差を、詰めてくれる吾妻くん。
そのフォローに意味がないとしても、なぜかすごく満たされた気分になった。
こんな感情、知らない。
はじめて抱く気持ちを、どう整理していいかわからない。
「杏莉ちゃん、拗ねてる?」
いつまでも顔を埋めたままのわたしに、彼は困ったように尋ねてくる。
ふるふると首を横に振れば、吾妻くんは腕を柔く引っ張って顔を上げさせようとする。
「ほら、顔上げよーな?」
「いや、です」
「俺もヤダ。はい、せーの」
「……」
「もー……なんで俺も、必死になってんだか」