噛んで、DESIRE
吾妻くんは完璧ではないのかもしれない。
思ったよりも、キケンじゃないのかもしれない。
知れば知るほど、わたしはどんどん欲張りになっていく。
「……吾妻くん」
俯いたまま彼に声をかける。
わたしの腕を未だに弱い力で引っ張っている吾妻くんは、つまらなさそうに返してくる。
「ん?」
「わたし、子どもに見えますか」
聞きたかったこと。
勇気を振り絞って尋ねた質問に、彼は仕方なさそうに笑うのだった。
「そう見えてたら、噛んだりしねえよ?」
やっと決心がついて顔を上げたときに見えた彼の表情は。
息を飲むほど、美しい微笑みを浮かべていた。