噛んで、DESIRE


両親から見放されたわたしを必要としてくれた澪子に、いつか恩返ししたいと思っている。

でもそんなことは照れくさくて言えない。


そのかわりに、彼女が心配してくれるたびに感謝を伝えるようにしているのだ。


「体調悪いとかだったら、無理しなくていいからね?」


貧血対策にあげる、と渡してくれた甘いチョコレートをありがたく頬張り、幸せな味で満たされる。


「うん、でも本当に大丈夫」

「そう? ならいいんだけどね」



腑に落ちないような表情を浮かべた澪子にうなずきつつ、チョコレートの甘さに溶かされる。

……吾妻くんはチョコレートで例えたら、きっとビター味。


でもたまに砂糖多めの極甘になる、ちょっと難しい人。




< 87 / 320 >

この作品をシェア

pagetop