噛んで、DESIRE
両親から見放されたわたしを必要としてくれた澪子に、いつか恩返ししたいと思っている。
でもそんなことは照れくさくて言えない。
そのかわりに、彼女が心配してくれるたびに感謝を伝えるようにしているのだ。
「体調悪いとかだったら、無理しなくていいからね?」
貧血対策にあげる、と渡してくれた甘いチョコレートをありがたく頬張り、幸せな味で満たされる。
「うん、でも本当に大丈夫」
「そう? ならいいんだけどね」
腑に落ちないような表情を浮かべた澪子にうなずきつつ、チョコレートの甘さに溶かされる。
……吾妻くんはチョコレートで例えたら、きっとビター味。
でもたまに砂糖多めの極甘になる、ちょっと難しい人。