噛んで、DESIRE


でも、どうしてか意地を張ってしまい、彼と目があわないように必死に避ける。

ノートを取る手もなぜか震えて、やっぱり吾妻くんはメデューサだと思った。


さすがに無視するのも耐えきれなくなり、一瞬だと割り切って、ちらりと彼を見る。

制服を着てもオーラが隠しきれていない吾妻くんは、わたしと目が合うと、ニコッと微笑んできた。


それだけなのに、心臓が跳ね上がって大変なことになる。


……こんな微笑み、家で、ふたりきりで、たくさん見たはずなのに。

場所が違うだけで、ぜんぜん破壊力が違う。


わたしが今日ずっとぼーっとしていたのも、吾妻くんの毒のせいだと思う。

ぜったいぜったい、噛まれたせい。








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