噛んで、DESIRE



思わず出た本音に、教室の空気が和やかになる。

隣の吾妻くんも、クスッと笑っていたのが聞こえた。



……ちょっかいかけて、助けてくれて、吾妻くんは何をしたいのか本当にわからない。

心惑わされるのも、こんなふうに優しくするから。


良くないと思う、狡いと思う。

いま少し顔が熱いのは、知らないふりをしてごまかした。


授業が再開し、ほっと息をなでおろしたのも束の間。

視界の端で、やっぱり寝入ってしまった吾妻くんの金色の髪は、きちんとセットされていて不思議な気分に陥る。


わたしが昨日とおととい見た彼は、皆んなが知らない吾妻くん。


目にかかるほど長い髪と、濡れて少し濃くなった金色も。








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