噛んで、DESIRE
抱きしめてくる腕も、獣みたいな瞳も。
こんなにも独占欲が湧いてしまうのは、どうしてだろう。
わたしだけが特別じゃないと、わかっている。
あれはただのイレギュラーだということも。
もし彼の優しさすらも、泊めてくれたお礼なだけだとしても。
わたしは吾妻くんを目で追ってしまうくらいには、既に気になってしまっている。
何が、どれが、本当の彼なのだろう。
どうして今日、途中から学校に来たのだろう。
わからないことだらけなのに、そんな影すらも丸ごと飲み込んで、彼と接したいと思ってしまう。
……でも、もう家に帰っても、吾妻くんはいないんだ。
どうしようもない喪失感に襲われながら、その日は一度も集中できないまま授業が終わった。