噛んで、DESIRE






「…………で、どうして、わたしの家の前にまたいるんですか」



放課後。

夜になってもいない時間帯に家に帰ると、いつかのデジャヴ。

ひとつ違うことがあると言えば、いま彼は煙草を吸っていないところだった。


……結局、吾妻くんがそばにいる生活が、日常になるのか。


わたしが寂しいと思った気持ちを返してほしいと沸々と思うほどには、もはや呆れ返っていた。



「杏莉ちゃんが寂しそーだったから」


……別にって、言ったのに。

また、吾妻くんはそうやってからかってくるんだ。



「そんなこと、言ってません」


掴みどころのない発言を流しつつ、家の鍵を開ける。

良いと言わなくても入ってくると思っていたけれど、意外にも吾妻くんはドアの外からわたしを見つめているだけだった。





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