恋愛以上とはいかないけれど
『寒い……。』
吐いた息が白くなって、風は髪の毛を拐う。
マフラーもタイツも身に付けているはずなのに、寒くて寒くて仕方がない。
まだまだ続く通学路が恨めしく思ってしまう。
そんな時、影が落ちて私を覆う。
私より数十センチぐらいは高い身長に、長い前髪からチラリと覗く切れ長の瞳。
世間的に言えば、"イケメン"と呼ばれる顔立ちをしているコイツは間宮律斗。
チャラチャラしていて女遊びはひどいが、一応私の親友。
こんなクズ、どこが良いのかなんて私にだって分からないけど、何となく一緒にいて楽しいから側にいる。
「おはよ、刹那ちゃん。」
『間宮、今日早いね、おはよ。』
すっと横に立って、私の隣で歩き出す。
あまりにも自然で、他の女の子にもこうやって隣で歩いているんだろう。
さすが間宮。慣れすぎている。
「刹那ちゃんと一緒に行きたくて、早く出てきちゃったわ。てか寒くない?」
『寒いけど…。』
…今コイツ、さらりと言いやがったな。
『○○ちゃんと一緒に行きたい』なんて、常套句だ。
さすが、チャラ男というべきか。
「じゃ、マフラーかーしーて」
「え」
私は自分の着けているマフラーに目を向ける。
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