好きだなんて、【完】
「俺は、っ…」
衝動的に紡がれたような勢いのある言葉
その先は、我に返ったのかハッとして黙り込んで、
ルビーのような綺麗な目から流れる雫
それは初めて見る、凪くんの涙だった。
「凪くんっ、…?」
目を大きく開ける私に、すごい勢いで顔を隠した
分からない。
泣くほど私のこと、嫌いなの?
それとも何か、隠してる?
今の凪くんはありえないくらい淡く、儚い
「もう、話しかけて来んな」
「え…」
「お前とはもう話したくない」
「っ、」
それは私の胸を突き刺すのには安易なほど尖っていて
出ない声の代わりに出たのは、涙
エレベーターはあっけなく私たちを6階まで運んで、扉を開けた
「早く、俺を嫌いになれ。」
何も言えない私を置いて、そんな言葉を吐いて顔を上げた頃にはもう凪くんは家の中だった。
嫌いに、なりたいよ。
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