好きだなんて、【完】



つららの目線の先、横断歩道を渡ろうとするしずくの姿。


つららに頼まれたであろう台本を大切そうに胸に抱える姿を捉えるだけで、胸が痛い。



「お姉ちゃんっ…!」




「しずくー、ありがとうー!」



横断歩道の前で手を振るつららと嬉しそうに駆け寄るしずく



不意に、つららのすぐ隣にいる俺を見つけたしずくは分かりやすく驚いた顔をする。



びっくりして怯んだのか歩くスピードが落ちた。




…分かりやす。まあ可愛いからいいけど。



そんなこと思いながら、俺は車に乗ろうと2人から離れていく。





俺には関係ない、そう唱えながら。






すると急ブレーキをかけたようなタイヤのスリップ音が耳に飛び込み振り向くと、



信号無視をしてしずくが渡る横断歩道に侵入しそうなトラックが目に入った。



あのスピードでその距離からブレーキをかけたって間に合うはずがない。




体が勝手に動いた。







無我夢中だった。







「しずく危ない!!!」





切羽詰まったつららの声、全てがスローモーションに見えて、





「しずくっ!」




「凪く、っ」




俺が走って来たとこに驚いて、何も理解できてないしずくを必死に抱き留めた。







強い衝撃と、しずくの香りを最後に意識が遠のいた。

















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