好きだなんて、【完】
「な、凪くんは…?」
見渡しても凪くんはいない。
代わりにいるのは、風季、事務所の社長さんと、稲妻さんだけ。
「凪は…まだ目を覚ましてなくて」
泣き出しそうな稲妻さんの細い声
芸能人だし、隣の個室にいるらしい。
サーと血の引いていく感覚
目の前が真っ暗に闇堕ちしていく
嘘でしょ…私のせいで?
いやだよ、凪くん。
なんで私のことなんて守ってくれるの?
嫌いなんでしょ?
「どうしてっ…うぅ、私のせいだっ」
私はどうしていつも凪くんに迷惑をかけちゃうんだろう。
「しずくのせいじゃないよ!」
「トラックの信号無視だから…」
俯く社長さんはとても苦しそう
どうも、脇見運転をしていて信号を見ていなかったらしい。
私もちゃんと確認して渡れば良かったんだ。
じゃなければ、こんなことには…
もし凪くんがこのまま目を覚まさなかったら?
怖い
「…わ、私、凪くんがいなくなっちゃったら…っ、生きていけないっ、」
「しずく…」
風季の今にも消えそうな声が聞こえた
「こんなにも好きなのにっ…ごめんなさいっ、」
迷惑ばかりかけて…
まだ好きって言えてないのに。
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