好きだなんて、【完】
ざーっと机に広げる教科書とノート
「んで、どこがわかんねーの?」
「えっと、」
全部わからない。
どこが分からないのかすら分からないなんて、言ったら引かれちゃうかな…
「どーせ、どっから分からんないかすら分かんねーんだろ。」
「え、」
「全部お見通しなんだよ。」
笑顔ではないけど、柔らかいその表情
胸が、痛い
…ずるいなあ
私のこと全部お見通しなんだったら、気持ちも気づいてる?
「じゃあまず、これから」
「はい!」
凪くんと並んで腰掛けるなんて、何年ぶりだろう。
勉強をするときだけかける黒縁の眼鏡も、いつも使ってたシャーペンも、ちょっと右上がりの字も、
分かりやすくて私に合った教え方をしてくれるところも、
変わらなくて、好き。