リアルに恋していいですか 〜10年ぶりに再会した超国民的スターに執着されています〜
第一章
〇撮影スタジオ(昼)
美奈「お願い! 代わりにモデルをやって欲しいの!」
美奈:雑誌社の同僚。ショートヘアの童顔で、妹気質。
美奈が手を合わせ懇願してくる。
菜穂子「しつこい。何度も無理って言ってるでしょ」
美奈「ええ〜お願いします神さま仏さま菜穂子さま! 相手のモデルが、急に体調悪くなって休むなんて想定外だよ! 一ノ瀬さん多忙だから、スケジュール調整して満を持してようやく今日撮影だったのに……!」
菜穂子:西野 菜穂子(にしの なほこ)26歳
雑誌社に勤めるOL。クールで美人。近寄り難い雰囲気がある。黒髪を緩く巻いている。
菜穂子モノローグ【私は雑誌社で働く普通のOL】
菜穂子モノローグ【ファッション誌で美奈が担当する『恋人特集』の撮影に裏方として来たはずが、まさかのモデルの代役を頼まれている】
菜穂子は渋い顔をしながら頑なに断る。
菜穂子(モデルになるのは構わないけど、相手が悪すぎる……)
美奈「ていうか、なんでそんなに嫌がるの? 菜穂子はスタイル良いしモデル並みの美人だし! それに今日の特集のメインは、一ノ瀬千晶だよ!?」
美奈はポケットからスマホを出し、写真を見せつけてくる。画面には、ステージで爽やかに汗を流しながら踊るアイドル衣装の千晶が。
菜穂子(それが大問題なのよ!)
美奈「菜穂子だってイッチー知ってるでしょ!?」
菜穂子「……知ってるけど」
美奈「アイドルと合法で写真撮ってもらえるなんて、滅多にないチャンスじゃん!?」
菜穂子「合法」
菜穂子が気まずそうな顔をすると、美奈が説明する。
美奈「一ノ瀬千晶。通称イッチー。今や知らない人はいない超国民的アイドル。アイドルグループLiLi2(リリツー)のメンバーで、CMや雑誌に引っ張りだこ。俳優としても活躍中」
彼はファン想いでプロ意識が高く、アイドルとして活動する10年間一度も熱愛報道がされなかった。
美奈「LiLi2の中でもビジュアルメンバーと言われる整った甘い顔立ちに、高いプロ意識とファン思いな優しい性格……。――あの! 一ノ瀬千晶だよ!? ねえ!? こんなチャンス断るなんてありえなくない!?」
目を血走らせて「お願い、お願い!」と迫ってくる美奈に、遂に観念する菜穂子。
菜穂子「……分かったから。やればいいんでしょやれば」
美奈「わ〜ありがとう恩に着る!」
がしっと手を握ってきて大喜びの美奈に、菜穂子は小さく息を吐く。
菜穂子「全く。調子がいいんだから」
菜穂子は困った顔を浮かべ、美奈のスマホの画面に映る千晶の写真を見下ろす。
(10年ぶり……になるのかしら。――千晶)
〇控え室(撮影開始前)
菜穂子は鏡台の前でヘアセットとメイクを施してもらう。
メイク担当「わ、肌すべっすべですね。普段どんなケアしてるんですか?」
菜穂子「普通の化粧水と乳液を使ってます」
メイク担当「やっぱりモデルさんは元がいいんですかねぇ」
菜穂子「……そんな、恐縮です」
菜穂子(モデルじゃなくて、ただの代役だけど)
化粧と髪が完全に仕上がった菜穂子は、きらきらとオーラを放つ。ヘアセット担当とメイク担当も感嘆の息を漏らす。
衣装のドレスワンピースに着替えて、控え室を出る。
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