リアルに恋していいですか 〜10年ぶりに再会した超国民的スターに執着されています〜

 ○帰り道(夜)

 ビルの電子掲示板に、LiLi2の新曲のMVが流れているのを横目に眺める。

 通行人の女性1「LiLi2だー。最近ほぼ毎月新曲出してるよねーすごい人気」
 通行人の女性2「うわ、イッチーの顔面強っ。付き合いたーい」
 通行人の女性1「分かる」

 電子掲示板を見て足を止めていた菜穂子だが、再び歩み始める。
 つかつかとヒールの足音が響く。

 すると、カバンの中からスマホの着信音が聞こえた。千晶からの通話だった。

 菜穂子「……もしもし」
 千晶「お疲れ様。仕事終わったかなって思って電話したんだけど、大丈夫だった?」
 菜穂子「ええ。ちょうど終わった帰り。千晶は?」
 千晶「俺は次の現場に移動中。日付が変わるまで仕事だよ」
 菜穂子「忙しいのね」

 菜穂子はスマホを片手に街を歩く。

 菜穂子「今度ね、カフェの店長さんにレシピを教えてもらうの」
 千晶「今日写真送ってくれたやつ? ていうかあのフルーツタルト、どっかで見たことあるような……」

 菜穂子は足を止める。

 菜穂子「あのさ。よかったら……食べる?」
 千晶「え、作ってくれるの? 食べたい」
 菜穂子「分かった。楽しみにしてて」
 千晶「ごめん、そろそろ切るわ。それじゃ、また」
 菜穂子「相変わらず忙しいわね。あまり無理しないでね」

 通話を切るボタンを押して、スマホを胸の辺りで握る。

 菜穂子(千晶の声、テレビで聞くよりちょっと低くて、落ち着いてる)
 菜穂子(声を聞けて、嬉しい……)

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