リアルに恋していいですか 〜10年ぶりに再会した超国民的スターに執着されています〜
第二章
〇回想・高校の校舎裏(昼間)
制服姿の菜穂子と千晶は向かい合って立っていた。千晶の方は深刻な表情をしている。
菜穂子「デビューおめでとう。ようやく夢の一歩ね」
千晶「ありがとう。……菜穂子」
菜穂子モノローグ【高校1年生の終わり、千晶はアイドルデビューが決まった】
菜穂子モノローグ【私たちは幼馴染で、付き合っていたのは3年間。千晶は、歌うことや踊ることが大好きだった。私は彼がアイドルになりたくて、色んなオーディションに応募しては落ちてを繰り返しているのを隣で見てきた】
菜穂子モノローグ【アイドルは女の子たちに夢を与える仕事。だから、身を引こうと思った】
菜穂子はにこりと微笑む。
菜穂子「――別れましょう、私たち」
千晶「…………」
しばらくの沈黙のあと、重々しく頷く千晶。
千晶「……うん。ごめん、菜穂子」
千晶が泣きそうな顔を浮かべたのを見て、菜穂子も顔をしかめる。千晶の近くにそっと近づいて、頬に手を添える。
千晶「本当にごめん。身勝手な理由で一緒にいられなくなって……。俺のこと、恨んでいいから」
菜穂子「恨む訳ないじゃない。むしろ、応援してるって……千晶が一番よく分かってるくせに」
千晶「……そうだね。ごめん……」
菜穂子「そんな……泣きそうな顔しないでよ。こっちまで……泣きそうになる……っ」
泣きそうになる、と言いながらすでに泣いている菜穂子。ぽろぽろ零れる涙を、瞳を潤ませた彼が両手で拭う。
千晶「俺、絶対にトップアイドルになるから」
菜穂子「うん。ずっと応援してる」
千晶「……とか言って、全然うまくいかないかもしれないけど」
菜穂子「やってみないと、未来のことは分からないわよ」
千晶「あのさ、最後に抱き締めてもいい?」
菜穂子がこくんと頷くと、千晶がそっとうえから抱き締める。
菜穂子「この3年間、幸せだったわ。今までありがとう」
千晶「俺こそありがとう。ずっと、お前の幸せを願ってるから」
○回想終わり