【完結】好感度-100から開始の乙女ゲーム攻略法 〜妹に全部奪われたので、攻略対象は私がもらってもいいですよね〜
家を追い出す以上の悪いこととは何だろうか。ペトロニラは自分のことを脅している。階段から突き落としておいて、尚も姉のことを追い詰めようとしているのだ。
ルサレテには彼女に従う以外に選択肢がなかった。何をすればいいのかと尋ねると彼女は言った。
「その目の前の空中ディスプレイに、ぜーったい、触らないで。一生よ一生!」
「空中でぃすぷれい……。もしかして、この光ってる絵のこと?」
「そーよ。それ以外にないでしょ」
「これは何の意味があるの?」
「さぁね。なんにも教えてあーげない。とにかくいい? 分かった?」
小さく頷くと、彼女は憂鬱そうに息を吐いて立ち上がり、こちらを見下ろして、「お姉様なんか死ねばいいのに」と吐き捨てて部屋を出て行った。
ずっと可愛い妹だと思っていた彼女に突き放されて、ずきんと胸の奥が痛む。
ペトロニラが出て行ったあと、もう一度空中ディスプレイを眺める。ペトロニラに触るなと釘を打たれているので触ることはしないが、呪いの道具とかなのだろうか。未知の存在に、あれこれと想像を掻き立てては身を竦めていたそのとき――。
どこも触っていないはずなのに、画面が強い光を放ち始めた。びっくりしたルサレテは後ろに仰け反り、シーツに手を着く。
「きゃっ、何……!?」
画面から白い光の塊が飛び出してきて、宙を浮遊している。もふもふで真っ白、丸い謎の物体。
(毛玉……?)
かと思えば、ぴょんっと小さな耳と長いしっぽが生え、つぶらな青い瞳がこちらを見据えていた。太った猫のような風貌のそれは、長いしっぽを振りながら喋った。
「おめでとう! あなたはボクら妖精族の乙女ゲーム転生プログラムの被験者に選ばれたよ!」
「乙女ゲーム……転生プログラム?」
自称妖精は、名前をシャロと名乗った。
シャロたち妖精族は神の使いで、死んだ人間の魂を扱うという。死んだ魂をより良い形で転生させるのために、人間を異世界に転生させて、いかに生きるか観察しデータを集める。その研究のひとつが、シャロが担当する乙女ゲームとやらが舞台の異世界らしい。
シャロはルサレテの周りを旋回し、身振り手振りで話を続けた。