【完結】好感度-100から開始の乙女ゲーム攻略法 〜妹に全部奪われたので、攻略対象は私がもらってもいいですよね〜

 ◇◇◇



「――わあ!?」

 敷地の中にいたはずなのに、瞬きをする間もなく外に転移していた。空中に転移したため、僅かな浮遊感とともに地面に落ちて体を打ち付ける。

(いたた……。ようやく怪我が治ったところなのに、手荒なんだから)

 立ち上がると、自分が王立学園の制服を着ていることにきづく。先ほどまではドレスを来ていたのに。ここは学園の敷地内だった。ルサレテとペトロニラ、そして攻略対象たちは王立学園に通っている。ルサレテは怪我をしたため休学中だった。

 今ちょうど自分がいるのは、敷地内の芝生広場。お昼になると、レジャーシートを敷いて昼食を食べている人や、お喋りをしているカップルを見かけることがある場所だ。そして、ルサレテの手には薬が入った紙袋が握られている。

(なるほど。最初のイベントはこれをロアン様に届ければいいのね。簡単じゃない)

 薬を買った分のポイントは減っていた。
 すると、芝生広場に佇む木の周りを生徒たちが囲んでいるのが見えた。

「どうかなさったのですか?」
「ルサレテ様……」

 噂を知っているのか、生徒たちは目配せし合って、ルサレテに対する不信感を一瞬見せた。

「……あそこを見てください。高いところに子猫が登って降りれなくなっちゃったみたいで」
「そっとしておけばそのうち降りてきますよ。人が集まっているから警戒しているのかも」
「それが――2日前からあそこにいるんです」

 女子生徒が指さした先に、木の幹の上で白い猫が震えているのが見えた。助けを求めるかのように、にゃあにゃあとか弱く鳴いている。登ったはいいものの、怖くて降りれなくなってしまったのだろうか。
 これもイベントのひとつかと思って画面を確認するが特に反応がないため、これはゲームとは無関係らしい。

 ルサレテは前世の実家で飼っていた猫を思い出した。好奇心で屋根の上から降りれなくなり、消防署に連絡したことがあった。

(猫って本当……世話が焼ける)

 でも、可愛い。手がかかればかかるほど可愛いのだ。鳴き続ける猫を見上げ、小さく息を吐いたルサレテは言った。

「私が捕まえてきます」
「ええっ!? でもこの木、高くて危ないですよ!?」
「あの猫ちゃんが足を滑らせて怪我でもしたら大変だもの」

 紙袋を一旦女子生徒に預けて、木の幹に手をかける。貴族令嬢だった今世は木登りなんてしたことがなかったけれど、前世で日本人だったときは、よく幼稚園や小学校の木を登って先生に叱られたものだ。

「よいしょ――っと」
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