【完結】好感度-100から開始の乙女ゲーム攻略法 〜妹に全部奪われたので、攻略対象は私がもらってもいいですよね〜
05.嫌いなはずなのに
ロアンはルサレテと別れたあと、馬車に乗って窓の外を眺め、思いを巡らせていた。
「ルサレテ・ナーウェル……」
考えていたのは、学園で親しくしている令嬢ペトロニラの姉のことだった。
ロアン・ミューレンスは、筆頭公爵家の令息として生まれた。子どものころから病気とは無縁で健康に生きていたが、王立学園に入学する1年前にある病気を患った。
今の医療では治療法が確立しておらず、医師からは天寿をまっとうすることはできない、普通の人よりずっと短い人生になるだろう、と言われていた。
両親や病気のことを知る使用人たちは、病気になったロアンに腫れ物に触るような態度を取るようになった。誰にも理解してもらえない、寂しさを感じるようになっていた。
そんなロアンにとって、ペトロニラ・ナーウェルは友人のひとりであり癒しだった。王立学園に入学してから知り合った彼女は、よく気が利くし、明るくて、優しい。国一番の花嫁候補と謳われるほど、完璧で人気があった。ロアンは彼女のことを、恋愛感情とまではいかずとも、妹のように想っていた。