【完結】好感度-100から開始の乙女ゲーム攻略法 〜妹に全部奪われたので、攻略対象は私がもらってもいいですよね〜
病気を知った人たちは皆、ロアンのことを哀れみ、同情し、腫れ物に触るように接する。病気になっただけで、ロアンは今までのロアンと変わりないのに。しかし、ルサレテは違った。
「では、何かとっておきの奇跡が起こるようにお祈りしますね」
「!」
初めてだった。病気を知ってもなお、普通に笑いかけて励ましてくれたのは。今まで出会った人たちとは違う反応をした彼女が新鮮で、好印象を受けた。けれどその日の夜、ルサレテはペトロニラを階段から突き落とそうとし、自分も一緒に落ちて怪我をする事件が起きたのだった。
ペトロニラは事件を機に、ずっとルサレテにいじめられていたと告白した。彼女の両親も、ルイやエリオット、サイラスも皆、ペトロニラは素直で嘘をつけない性格だからとそれを信じた。
ルサレテは周りから失望され、孤立していった。今は怪我の療養中だが、家まで追い出されることになり、学園の宿舎で暮らすことが決まったとも聞いていた。そんなある日、休学中のルサレテが学園の芝生広場の木に登っているのを見つけた。
「そこで何をしている!」
ペトロニラに不当な仕打ちをしていたことへの怒りと、休養中なのになぜ今学園にいて木などに登っているのかという不信感から、怒ったように話しかける。するとルサレテはびくと肩を跳ねさせて、下に落ちてきた。……猫を抱えたまま。
落ちてくる彼女を見て、咄嗟に抱き留めていた。高いところから重力がかかった身体を抱えきれず、ロアンが下敷きになる形で地面に崩れ落ちた。
顔を上げたルサレテと目が合うが、悪人というにはあまりにも澄んだ瞳をしていた。絆されそうになる心をしまい込み、重いから退いてと冷たく突っぱねる。女性に「重い」というのはあまりに配慮のないことだが、彼女への怒りから気を遣うことができなかった。
話を聞くと、ルサレテは木から降りられなくなった子猫を助けていたらしい。子猫を助けるのはいいが、自分が木から落ちて怪我をしたらどうするつもりだったのだろうか。思慮が浅いと思う気持ちの方が強かった。
すると、ルサレテは薬の入った紙袋をこちらに渡してきた。毒でも入っているのではないかと疑ったが、その薬は、ロアンの発作を本当に鎮めた。誕生日会のときに苦しんでいるロアンを見て、心配してわざわざ調べてくれたというのだ。
「あの日、俺に奇跡が起こるようにと願ってくれた君も、今目の前にいる君も、優しい。ペトロニラにひどい仕打ちをしたとは思えなくなってくる」
「信じてもらえないかもしれませんが、私はペトロニラを階段から落としたりいじめたりしていません。私だって、言われのない罪で恨まれることが悔しくて仕方がないですよ。でももういいんです。ロアン様は信じたい人を信じてください。では、ごきげんよう」