【完結】好感度-100から開始の乙女ゲーム攻略法 〜妹に全部奪われたので、攻略対象は私がもらってもいいですよね〜
それは、どうしてまだこの屋敷にいるのか、早く出て行けと暗に言っているのだと理解した。階段から落とそうとしたのはペトロニラの方なのに、どうして自分の方が家を出ていかなければならないのだろうか。不本意だが、今のルサレテに弁解の余地はない。
「明日には出て行くつもりなので、ご心配なく」
2人の美男子の視線が鋭く居心地が悪いので、すぐにその場から離れようとするが、ペトロニラがなぜか袖をつまんで引き留めてきた。
「ごめん、なさい……」
「はい?」
「だって、お姉様は私のせいで屋敷から追い出されて、お母様やお父様からの信頼も、何もかも失ってしまったんだもの。可哀想……」
「…………」
ルサレテは拳を固く握り締める。一体誰が、誰に対して、何を言っているのだろう。ペトロニラは、ルサレテのことを挑発しているのだ。自分が何もかも奪っておいて、反応を面白がっているようで。
「お姉様にはひどいことをされたけれど、私は憎んだりしていませんよ。だって、血を分けた大切な人ですもの。いつかまた、昔みたいに仲良くなれるように信じています!」
「冗談はやめて。今更昔に、戻れる訳ないわ」
「きゃ……っ」
掴んでくる手を軽くあしらうと、ペトロニラは大袈裟に吹き飛ばされて、サイラスに抱き留められた。
ペトロニラは悲劇のヒロイン気取りで目を潤ませ、サイラスの服をぎゅっと握り、こちらを見た。
「私のこと、まだ恨んでいるんですか?」
「とても恨んでいるわ。――自分自身のことをね」
「え……?」
「私が無実だと訴えても、誰も信じてはくれなかった。今まで周りの人たちの信頼を得ることができなかった自分が情けなくて、悔しくて、恨めしいの」
彼女の挑発には乗らず、冷静に答えた。むしろ、子どもじみた挑発をしたペトロニラに、放っておけばいいものを、と後ろの2人が困惑の色を浮かべている。
「なっ……!? 嘘ですっ! エリオット様やサイラス様の前だからって、いい子ちゃんぶっているんでしょう? 本当は、私のことが憎くて憎くて仕方がないくせに」
「いいえ。だって、あなたは血を分けた妹だから」
「……っ」
さっきペトロニラに言われたのと同じ文言で煽り返すと、彼女は悔しそうに歯ぎしりした。嘘つき呼ばわりされるのはもう慣れてきたが、ルサレテはここまで本当のことしか言っていない。