【完結】好感度-100から開始の乙女ゲーム攻略法 〜妹に全部奪われたので、攻略対象は私がもらってもいいですよね〜
「ねぇ、調子に乗ってるの? お姉様」
「痛……っ、そこ、怪我してるからそんなに強く掴まないで……っ」
「口答えしないで。私、再三言ったよね? 攻略対象には近づくなって……。どうして私の言うことを聞けないの? そんなに私を怒らせて、もっとひどい目に遭いたい?」
ペトロニラは腕を掴む力を強め、爪も立ててくる。ルサレテは絞り出すように小さな声で反発した。
「もう……ひどい目には遭ってるわ。私の全部を奪ったじゃない」
元婚約者も、両親も、学園の人たちも、誰もがペトロニラの味方だ。なぜなら彼女は、模範的で、完璧な令嬢だったから。でも実は、乙女ゲームの力を使ってずるをして得てきた評価だったのだ。きっと、今目の前で見せているのが本来の彼女なのだろう。
「目障りなの! お姉様なんて、あの日階段から落ちて――死ねばよかったのに!」
彼女は力いっぱいこちらを突き飛ばして、踵を返した。尻もちを搗いたルサレテは、ずきずきと脈打つように痛む腕を擦って俯いた。
(全部奪ったのだから、攻略対象のひとりくらいもらってもいいわよね。ペトロニラ)
ペトロニラが乙女ゲームの力で攻略対象たち上流階級に取り入り、国一番の花嫁候補という名誉と確固たる地位を築けたのなら、ルサレテも現状を変えることができるかもしれない。やられっぱなしでいるつもりはない。
そして、同じく医務室から出てきたサイラスが、姉妹のやり取りの全貌を見て唖然としていた……。