【完結】好感度-100から開始の乙女ゲーム攻略法 〜妹に全部奪われたので、攻略対象は私がもらってもいいですよね〜
「お〜奮発するネ」
「ええ。少しでもいいと思ってほしくて」
「それは……ゲーム攻略のタメ? それとも本心?」
シャロに指摘され、どきっと心臓が跳ねる。ロアンは前世でゲームをプレイしていたときの推しだった。ルサレテも病気を患っており、唯一の心の拠り所がゲームだったから。同じように病気を抱えていたロアンに、共感する部分もあり、幸せになってほしいと応援していた。
せっかく異世界で推しに会えたものの、嫌われてしまっている。それでも、ロアンが推しであることには変わりない。
「園遊会が終わったら、また沢山歩き直さないと」
魅力度の高いドレスを着ていけば、その分好感度メーターが上がる。マイナスからのスタートなので、少しでも数値が上がるように頑張らなくては。
ドレスを購入し、『着替える』をタップすると、何もしていないのに一瞬で着替えが完了した。姿見の前に立って腰を揺らすと、ドレスのスカートがふわりと翻る。
それから、ゲームの転移機能であっという間に集合場所へ移動した。
◇◇◇
園遊会は盛会だった。宝石のように繊細なお菓子が、レースクロスのかかったテーブルに所狭しとと並んでいる。上流階級の貴族たちが、あちこちで雑談している。
「ねぇ、あの令嬢はどなた?」
「わ……すごく綺麗」
「ドレスも素敵ね。どこで仕立ててきたのかぜひお聞きしたいわ」
会場の王宮庭園に着いて早々、ルサレテは注目の的になっていた。ゲームのアイテムとして手に入れたドレスを身にまとっているため、オーラが何割も増してとりわけ華やかに見えるのだろう。
(ロアン様は……どこかしら)
きょろきょろと辺りを見渡すと、人集りを見つけた。複数の夫人に囲まれ、もてはやされていたのは攻略対象のひとり、ロアンだった。学園で若い令嬢たちに囲まれているのはよく見ていたが、年齢層の高い女性にも同様に好かれるらしい。
彼はルサレテの姿を見かけて目を見開いた。
「すみません。先約があるので失礼しますね。お嬢さんたち」
「まぁ、お嬢さんだなんて久しぶりに言われたわぁ」
「顔がいいだけじゃなくてお上手ねぇ」
ロアンを取り囲んでいる夫人たちは、残念そうに彼を見送る。ロアンはまっすぐこちらに歩いてきて、ルサレテの姿をじっと見つめた。
「ごきげんよう。ロアン様は大人気ですね」
「え……あ、そんなことないよ。それより……驚いたな。今日の君、すごく綺麗だ」
「ありがとう……ございます」
すると、彼の好感度は+10アップして、-40になった。ロアンの好みに合わせたドレスを手に入れるために多くのポイントを費やしたのだから、綺麗だと思ってくれなくては困る。
今日のルサレテは、全身緑色に染まっている。それは、彼の瞳をイメージしたものだ。
「今日は無理を言ってすまないね。家長の代理でこの会に出なくちゃならなくて、パートナーが必要だったんだ。……一応言っておくけど、誘いやすい君を選んだだけだから、妙な誤解はしないように」
「え……ああ、はい」