【完結】好感度-100から開始の乙女ゲーム攻略法 〜妹に全部奪われたので、攻略対象は私がもらってもいいですよね〜


 彼はありがとうと礼を言って踵を返し、広間へ戻って行った。ペトロニラや友人たちの前で気丈に振る舞う彼の様子を見て、なんだか胸が痛くなった。

 パーティーが終わったその夜。二階から一階の自室に移動しようと廊下を歩き、螺旋階段に差しかかったところで、ペトロニラがこちらを呼び止めた。

「――待ってください。お姉様」
「どうしたの?」
「今日のパーティーでロアン様と何をお話になったの?」
「何って、それは……」

 ふいに、咳をして苦しそうだったロアンの姿が脳裏に浮かぶ。彼が病気を患っていることは内緒にする約束だったから誤魔化すしかない。

「大した話はしてないわ」
「嘘です。やけに距離が近かったではありませんか。お姉様が彼の背中に触れているのを見ましたよ」

 それは、咳をしていたから擦ってやっただけだ。ペトロニラはルサレテたちが親密な関係ではないかと疑っているようだが、誤解だ。どう説明したらいいかと頭を悩ませていると、彼女が更に畳みかけてくる。

「ロアン様は私の一番の推しなの。せっかく好感度のメーターも数年かけて半分まで上げてきたのに……。お姉様、私のロアン様を奪うつもりなんでしょ!? ロアン様と喋らないで!」

 普段は温厚な彼女にキッときつく睨めつけられて戸惑ってしまう。それに、いつもよりずっと口調が荒く、表情が怖い。

「推し……? めーたー? 悪いけれど、言っている意味が分からないわ」
「……絶対に邪魔させないんだから」
「ペトロニラ……?」

 彼女は地を這うように言うと、――どんっと力任せにルサレテの身体を押した。衝撃とともに重心が階段の下に傾く。
 ルサレテは何かに掴まってバランスを取ろうと腕を伸ばし、咄嗟にペトロニラの手を掴んでいた。引っ張られた彼女の身体も前のめりになる。


「へっ、ちょっと何して……――きゃああああああっ!」
「きゃあっ…………っ」


 二人は絡み合うように、螺旋階段の上から滑り落ちた。
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