【完結】好感度-100から開始の乙女ゲーム攻略法 〜妹に全部奪われたので、攻略対象は私がもらってもいいですよね〜
ロアンはペトロニラを慰めるどころか、拗ねた発言を構わず斬り捨てた。
困っている人がいるのに、しかもその相手はルイの妹なのに放っておくなんて、乙女ゲームのヒロインにはあるまじき対応だ。もしペトロニラに空中ディスプレイが見えていたのなら、きっと指示にしたがって捜索を手伝っていたのだろうが……。
ルサレテは悔しそうにするペトロニラを置いて席を離れた。
画面には矢印が出ており、指輪の在り処を指し示している。それを辿って行くと、池に辿り着いた。足首が浸かるくらいの浅い池だが、昨夜雨が降っていたせいで、水が茶色く濁り、汚れが浮いている。
(うわぁ……この中を探せっていうの?)
好感度アップはそう甘くはなかった。何が悲しくて、大枚はたいて手に入れたドレスを汚してまで池の中に入らなければならないのだろうか。しかし、『そっちだ』と急かすように矢印が点滅するのを見て、しぶしぶ池の中に足を入れた。
これは好感度アップのため、と呪文のようにしつこく反芻する。腕を水中に突っ込んで指輪を探していると、指先に金属の感触が。
「……あった」
指輪を手に池の外へ出る。泥で汚れたまま王女の元へ行くと、一気に好奇の視線が集まった。人々は泥まみれで汚いと顔をしかめたり、臭いと鼻をつまんだりして、嫌悪を示した。
しかしルサレテは意に介さず、今も泣きそうになりながら茂みの中に手を突っ込んで指輪を探している王女に声をかけた。
「王女様。お探しの指輪はこちらでしょうか」
「……! そう、これよ……!」
彼女はがしっとこちらの手を握り、指輪を確かめた。彼女の手袋も、土や草で汚れている。どこで見つけたのかと聞かれ、池の方を指差した。
「まぁ。なぜ池の中にこれがあるとお分かりに?」
「水中で金属が光ったのが見えたんです。御手元に戻ったようでよかったです」
本当は空中ディスプレイが案内してくれただけだが、それは内緒だ。