【完結】好感度-100から開始の乙女ゲーム攻略法 〜妹に全部奪われたので、攻略対象は私がもらってもいいですよね〜
ロアンの頭の上に浮かぶ、好感度メーターは99を示したまま。実はこの数字のままずっと停滞している。あとたったひとつ数値が上がるだけで、攻略達成、ゲームクリアなのに。
一刻も早くゲームのクリア報酬で治してあげたいのに、彼の体調は悪くなる一方で。
(好感度の数値が99で止まっている理由……私には分かる気がする)
「どうしてですか? もし会いたいと思っていたくださっていたなら私……すごく嬉しいのに」
「……俺を困らせないで。とにかく、聞かなかったことにしてほしい。ごほっ、ごほ……」
「…………」
ロアンはルサレテへの好意をあと一歩のところで隠そうとする。甘い表情を見せて、優しくして、思わせぶりなことはするくせに、肝心なことは何も言ってくれない。
苦しそうに咳き込むロアンは、きまり悪そうにごめんねと謝罪を口にした。
すると、ルサレテの目の前に3つの選択肢が現れた。
『①きっと元気になると励ます ②静かに抱き締める ③話題を変える』
それらの選択肢を見たが、ルサレテはどれも選ばなかった。彼の手を上から握る。
「私……ロアン様のことが――好きです」
「…………」
彼は少し目を見開いたあと、戸惑い、悲しげに目を伏せた。この攻略で、好感度メーターが満たされる前に告白するのは反則かもしれない。けれどたぶん、ゲームではない現実にいるロアンは……ルサレテを好きになるのを理性で留めている。
「駄目だよ、ルサレテ。俺なんか好きになっちゃ」
「それは、ロアン様が病気だからですか?」
「そうだよ。俺は君の元を早く去っていく人間だから。……君に悲しい思いをさせたくはない。分かるでしょ?」
今のままでは、ロアンの寿命は普通よりずっと短い。彼にもその自覚がある。想いを通わせたところで、必ず遠くないうちに残酷な別れがやって来て、ルサレテは傷つき、悲しむことになる。
あと一歩のところで、彼がルサレテへの好意を抑え込んでいたのは――そのことに負い目を感じているからだろう。
ルサレテも前世で病に伏せってばかりだったころ、周りに迷惑をかけることに負い目を感じていたし、恋人を作ることもしなかった。誰かを傷つけないためにひとりぼっちでいることを選んだルサレテには、彼の気持ちが手に取るように分かる。
(病気を患っている人に必要なのは、口先だけの励ましや慰めじゃない。離れずにそばにいてくれる……大切な人)