【完結】好感度-100から開始の乙女ゲーム攻略法 〜妹に全部奪われたので、攻略対象は私がもらってもいいですよね〜
16.別れと新たな日常
ロアンの屋敷を出たあと、空中を浮遊するシャロの体が透けていることに気づいた。そういえば彼は、被験者の攻略が終わったら妖精の世界に帰るのだった。
「もう……いなくなってしまうの?」
「うん。本部に戻って報告とか色々やらなきゃいけないからネ。これでキミとはお別レ。検証させてもらった『元異世界人が乙女ゲームの世界でいかに適応するか』についてのデータは、大切に預からせてもらうヨ」
「そ、そう」
死んだ魂をより良い形で転生させるためにこんな研究をしていると言っていたが、今ひとつ、乙女ゲーム転生プログラムに関して理解が及ばないルサレテ。
「なら、この空中ディスプレイやアイテムはどうなるの?」
「ボクと一緒に消失するヨ。キミにはもう必要のないものだかラ」
そう説明する間にも、みるみる薄くなっていくシャロ。
半年以上一緒に過ごし、ここが乙女ゲームの世界であることを知っている仲間がいなくなってしまうのは正直なところ寂しい。
光の粒になって消え始めたシャロの毛並みを、最後にそっと撫でて告げる。
「今までありがとう。私が頑張ったこと、ちゃんと報告してね。……それから元気で。シャロ」
「ルサレテもネ! バイバーイ!」
にっこりと笑って尻尾を振り、妖精シャロはいなくなってしまった。乙女ゲームの被験者になったと告げられたときも唐突だったが、あっさりとした別れ際も、彼らしい。