【完結】好感度-100から開始の乙女ゲーム攻略法 〜妹に全部奪われたので、攻略対象は私がもらってもいいですよね〜
しかし、ペトロニラとルサレテの階段転落事件の際、ペトロニラ側についた彼は、一方的にルサレテに婚約解消を言い渡した。……自分の立場を忘れて。そのときに彼は、侯爵家の後継者としての権利も手放したことになる。
ジェイデンはペトロニラに惚れており、本命の彼女が弱っているときに支えることで、振り向かせたかったのだろう。
もっとも、ペトロニラはルサレテへの嫌がらせのためにジェイデンを自分のものにしようとしていただけで、攻略対象たちの方に夢中だったのだが。
ジェイデンは深く頭を下げる。
「一時でもルサレテのことを疑って、本当に悪かったと思っている。反省してるんだ。だから早く家に戻ってきて、以前みたいな関係からやり直そう。今度は何があっても君のことを信じると約束するから……!」
そう言って彼は、背中に隠し持っていたバラの花束をこちらに差し出した。婚約していたときは、花束どころか、一度も贈り物をもらったこともなかったのに。
ジェイデンにはルサレテに対する愛情などなく、自分の将来のために必死になっていることが見え透いていて、ルサレテはどう反応していいか困った。
(一度は突き放しておいて、今更元に戻ろうだなんて、図々しいとは思わないの? それも完全に、自分の将来のためだけに……)
綺麗な花束を差し出されても、抱いたのは嫌悪感だった。
立場を失ったことに対しては多少同情するが、ルサレテが結婚してまで助ける義理はない。
ルサレテは頭を下げ、丁寧に断る。
「ごめんなさい。ジェイデン様とやり直すつもりはありません。その花束も受け取れません。侯爵家を継ぐ以外で、ジェイデン様が生きていく道が見つかることを願っています。どうかお帰りを」
「…………生意気な」
彼はルサレテに聞こえないくらい小さな声でそう呟くと、花束を下げてルサレテの腕をぐっと掴んだ。
「前から思ってたんだけど、君はそのつんと澄ました態度を改めた方がいいな。鼻につく」
「ちょっと、何……!?」
「ペトロニラは、愛想もよく、可愛げがある人だった。潤んだ瞳で甘えてくるところはたまらなくいじらしくて……。君は無愛想で、面白みも可愛げもない。昔からね。君の両親もずっとそう言っていたよ。ペトロニラは可愛いがルサレテは可愛くない……と」
この期に及んで、まだジェイデンはペトロニラの肩を持つというのだろうか。ペトロニラが姉を階段と窓から突き落とそうとしたことを知りながら。
それに、両親の話まで出して、わざわざルサレテを傷つける意味はないのに。
「その調子では、一生嫁の貰い手もないんじゃないかな?」
随分と高圧的な物言いに変わる。
花束を携え、プライドを捨てて擦り寄ったのに拒まれ、気に食わなかったのだろう。
「君の女性としての名誉を守るために、善意で結婚してあげるんだ。君にとっても悪い話ではないはず――」
「嫌だって言っているの!」
腕を振りほどこうと身じろぎながら、彼を睨めつける。