星川学園にようこそ!

入学式7

「もう、あいったら、急に走り出すから。あら、あなたはC組にいた……」
 ほだかくんのお母さんと目が合って、私は頭を下げる。
「七川音美です。よろしくお願いします」
「鈴森めぐみです。七川さんって、朝ふたりを学校まで案内してもらった……?」
「うん、やさしいお姉さんなんだよ」
 やさしい、ってあいちゃんに言われた。へへ。
「ありがとう。私が学校まで連れていくべきだったんだけど、朝ばたばたして」
「ただ案内しただけですから。あっ、写真、とりますよ。あの桜の木の下とか、どうですか?」
 私もほだかくんに写真をとってもらったんだ。これくらいはしないと。
「サンキュー、じゃあ、オレのスマホでお願い」
 ほだかくんは、ポケットからスマホを取り出した。私に渡してくる。
 ほだかくんたち3人は、桜の木の下にならんだ。私はスマホの画面ごしに、3人を眺める。
 りっかちゃんの入学式を思い出した。私も新しい制服を着たりっかちゃんと並んで、この桜の木の下で写真をとったな。
「じゃあ、いきます」
 私はシャッターのボタンを押した。
「音美姉さんもいっしょにとろうよ」
 あいちゃんが言い出した。
「私も?」
 私なんかがいっしょになって、ほだかくん、いいのかな。
「あいが言うなら、しょうがないな。こっち来てくれるか?」
 ほだかくん、あいちゃんに甘すぎ。でも……。
「うん」
 私も、あいちゃんといっしょの写真を残したい。
「私がとるから、七川さんはこっちに」
 めぐみがこっちに来る。私はスマホを渡して、ふたりといっしょに桜の木の下に向かった。
 私とほだかくんの間に、あいちゃんが立つ。
「じゃあ、とるわよ。3、2、1……」
 めぐみさんがシャッターを押す、その瞬間に……。
 ぎゅっ。
 私の手が、小さい手ににぎられた。
「えっ……」
 カシャ。写真がとられる。
 あいちゃんは、私の手をにぎったままだ。小さくてやわらかくて、温かい。
「もう1枚とるわ」
 めぐみさんは、もう一度シャッターを押す。1枚目は驚いた顔になったけど、今度はうまく笑えた。いい写真になったよね。
 ――なんだか、りっかちゃんがもどってきたみたい。
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