青春は、数学に染まる。
第二話 真帆と数学
初めての考査
入学して1月経ち、あっという間に5月に入った。
帰宅部に入部した私は、毎日掃除が終わったら速攻帰る毎日。
有紗は言っていた通り空手部に入部した。朝練も始まり毎日忙しそうに過ごしている。
帰りは一緒にならないけれど、昼休みは有紗と過ごし、お互いの情報共有をしていた。有紗と過ごすこの時間が一番好きだ。
「で~、真帆。伊東先生とはどうなの?」
「え!! ゴホッ、え、えぇ~」
昼休みは相変わらず中庭のベンチ。周りには誰もいなくて、私と有紗の二人きり。
「ちょっと!! むせるじゃん!」
「へへへっ」
いちごミルクを飲んでいる最中に有紗が変な事聞くからむせた。
「何も無いよ。接点も無いよ」
「ははは、知っているよ! ただ、伊東先生の名前出したらどうなるかなって試しただけ!」
有紗はサンドイッチを頬張りながらニヤニヤしてこっちを見ている。
どうやら有紗には隠し事が出来ないらしい。
実は有紗と一緒に伊東先生を見かけたあの時から、一言も伊東先生の名前を口に出していない。ただ、授業の移動などで伊東先生が目に入ると…やっぱりドキッとしていた。口には出さないけど、そんな私の様子に有紗は気付いていたのだろう。
「真帆ったら、やっぱり伊東先生のこと好きになっているよね?」
「………」
「ね! 私に隠し事はできないよ?」
有紗は私の肩に手を置いて目を合わせようとしてくる。
姿を見かけて心臓がドキドキするのって、好きってことになるのかな?
私、伊東先生のこと何も知らないのに。
「ドキドキするってことは、好きってこと?」
「ふふ、私はそう思うよ」
「伊東先生と会話もしたこと無いのに?」
「そこから始まる片思いもあると思うよ。一目惚れってやつ?」
ニヤニヤと話す有紗。楽しんでいるようにしか見えない。
しかし…どうだろう。
私は本当に伊東先生のことが好きなのかな?
こういうパターンは初めてで、自分の感情を何と呼ぶのか答えが見つからない。
悩みながら険しい表情になっていたのだろう。ニヤニヤしていた有紗は次第に真顔になった。そしてサンドイッチを頬張る手を止めて真剣な顔をして口を開く。
「真帆、関わりがあるかとか会話をしたことがあるとか無いとか、そんなのは関係無いと思うよ。世の中には一目惚れっていうものもあるし、その人知らないから〜って言って自分の感情に蓋をする必要は無いと思う。だからいつかさ! 真帆のその感情に答えが出た時、絶対私に教えてよね! その時は本気で応援するから!」
有紗はニコッと微笑んで再びサンドイッチを口に入れた。
どこで覚えてきたの、そのセリフ。
「急に大人すぎる発言をするからびっくりしたぁ…。恋愛経験者だったっけ?」
「恋愛漫画から仕入れた知識があるだけだよ。実際私は片思いすらしたこと無かったから分かんないけどね〜」
ニヤニヤしてふざけているように見えて真剣に考えていることも多いから…有紗は侮れない。
「ていうか、過去形? 片思いすらしたこと無かった?」
「うわぁ! さすが鋭い!! いや、私も真帆に言っておかないとね」
「ん、何を?」
有紗は鼻から息を吐き出し、私の耳元に口を近づけて囁くように言った。
「私、空手部の先輩のこと好きになったんだぁ」
顔を離して目を合わせると、有紗は少し顔を赤く染めて微笑んでいた。
「片思い??」
「そう、片思い」
どうやら有紗が好きになった人は3年生の青見先輩と言うらしい。
空手が凄く上手で背が高くてカッコいい人みたい。
有紗は高校に入るまでずっと空手一筋で、恋をする素振りも見られなかったから自分の事のように嬉しい。
「有紗が恋するなんて…嬉し過ぎる!! ついに春が来たね」
「まだ片思いだけど、新鮮なんだぁ。私が片思いするなんて」
ストローを咥えていちごミルクを吸い込む。有紗の唐突なカミングアウトに胸が躍った。耳まで赤くしながらも、クールな感じを気取っている有紗が可愛い。
私は校舎の窓越しに青空を見つめながら、自分の感情と向き合うことを心に決めた。
帰宅部に入部した私は、毎日掃除が終わったら速攻帰る毎日。
有紗は言っていた通り空手部に入部した。朝練も始まり毎日忙しそうに過ごしている。
帰りは一緒にならないけれど、昼休みは有紗と過ごし、お互いの情報共有をしていた。有紗と過ごすこの時間が一番好きだ。
「で~、真帆。伊東先生とはどうなの?」
「え!! ゴホッ、え、えぇ~」
昼休みは相変わらず中庭のベンチ。周りには誰もいなくて、私と有紗の二人きり。
「ちょっと!! むせるじゃん!」
「へへへっ」
いちごミルクを飲んでいる最中に有紗が変な事聞くからむせた。
「何も無いよ。接点も無いよ」
「ははは、知っているよ! ただ、伊東先生の名前出したらどうなるかなって試しただけ!」
有紗はサンドイッチを頬張りながらニヤニヤしてこっちを見ている。
どうやら有紗には隠し事が出来ないらしい。
実は有紗と一緒に伊東先生を見かけたあの時から、一言も伊東先生の名前を口に出していない。ただ、授業の移動などで伊東先生が目に入ると…やっぱりドキッとしていた。口には出さないけど、そんな私の様子に有紗は気付いていたのだろう。
「真帆ったら、やっぱり伊東先生のこと好きになっているよね?」
「………」
「ね! 私に隠し事はできないよ?」
有紗は私の肩に手を置いて目を合わせようとしてくる。
姿を見かけて心臓がドキドキするのって、好きってことになるのかな?
私、伊東先生のこと何も知らないのに。
「ドキドキするってことは、好きってこと?」
「ふふ、私はそう思うよ」
「伊東先生と会話もしたこと無いのに?」
「そこから始まる片思いもあると思うよ。一目惚れってやつ?」
ニヤニヤと話す有紗。楽しんでいるようにしか見えない。
しかし…どうだろう。
私は本当に伊東先生のことが好きなのかな?
こういうパターンは初めてで、自分の感情を何と呼ぶのか答えが見つからない。
悩みながら険しい表情になっていたのだろう。ニヤニヤしていた有紗は次第に真顔になった。そしてサンドイッチを頬張る手を止めて真剣な顔をして口を開く。
「真帆、関わりがあるかとか会話をしたことがあるとか無いとか、そんなのは関係無いと思うよ。世の中には一目惚れっていうものもあるし、その人知らないから〜って言って自分の感情に蓋をする必要は無いと思う。だからいつかさ! 真帆のその感情に答えが出た時、絶対私に教えてよね! その時は本気で応援するから!」
有紗はニコッと微笑んで再びサンドイッチを口に入れた。
どこで覚えてきたの、そのセリフ。
「急に大人すぎる発言をするからびっくりしたぁ…。恋愛経験者だったっけ?」
「恋愛漫画から仕入れた知識があるだけだよ。実際私は片思いすらしたこと無かったから分かんないけどね〜」
ニヤニヤしてふざけているように見えて真剣に考えていることも多いから…有紗は侮れない。
「ていうか、過去形? 片思いすらしたこと無かった?」
「うわぁ! さすが鋭い!! いや、私も真帆に言っておかないとね」
「ん、何を?」
有紗は鼻から息を吐き出し、私の耳元に口を近づけて囁くように言った。
「私、空手部の先輩のこと好きになったんだぁ」
顔を離して目を合わせると、有紗は少し顔を赤く染めて微笑んでいた。
「片思い??」
「そう、片思い」
どうやら有紗が好きになった人は3年生の青見先輩と言うらしい。
空手が凄く上手で背が高くてカッコいい人みたい。
有紗は高校に入るまでずっと空手一筋で、恋をする素振りも見られなかったから自分の事のように嬉しい。
「有紗が恋するなんて…嬉し過ぎる!! ついに春が来たね」
「まだ片思いだけど、新鮮なんだぁ。私が片思いするなんて」
ストローを咥えていちごミルクを吸い込む。有紗の唐突なカミングアウトに胸が躍った。耳まで赤くしながらも、クールな感じを気取っている有紗が可愛い。
私は校舎の窓越しに青空を見つめながら、自分の感情と向き合うことを心に決めた。