青春は、数学に染まる。
昇降口で靴を履いていると、後ろから私の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。
誰なのかは声で分かる。
「追いつかれちゃう」
私は大急ぎで昇降口を飛び出した。
その後正門も飛び出し、長い下り坂もひたすら走る。
帰宅部の帰宅時間は過ぎ、部活所属者は活動中。道に生徒は誰もいない。
「っあ!!」
坂を下りきった場所で足が絡まり思い切り転んだ。
「っ…」
膝が擦れて血が出ていた。
本当に今日はついていない。数学は7点、意識を失って、早川先生に抱き締められて、伊東が早川先生を殴るところを見てしまって…最後はこれ。
「帰らなきゃ」
血が流れる場所に持っていたタオルを巻いた。
いつも駅まで徒歩だが、今日はバスに乗ろう…。
念のため学校前にあるバス停はスルーして、次までゆっくり歩く。
そう遠くはない。
次のバス停に着き、私はベンチに座った。そこでやっと心を落ち着けることができた。
「……はぁ…」
ズキズキと痛む膝。さっき巻いたタオルには血が滲んでいる。
「どうしてこうなるんだろう。…有紗…」
親友の名を呼ぶと、涙が溢れて止まらなくなった。