青春は、数学に染まる。
早川先生の本音
図書館で自由に過ごし、気付けば時刻は17時30分になっていた。
「そろそろ帰るか…」
帰りは駅に行って電車で帰ることにした。
自宅前が何やら騒がしい。いつもと様子が違うようだ。
お母さんと男の人が何か話している。お父さんではないな…。
「…お母さん?」
恐る恐る近付いて声を掛ける。
私の声を聞いた2人は同時にこちらを向いた。
「あぁ、真帆! 今日どこ行っていたの!?」
お母さんが私の姿を見て道路まで飛んできた。
「学校行っていなかったってどういうことよ! 休みたいなら休むって言えば良いのに!!」
「ごめんなさい」
…ん?
謝ってから気付いた。何故休んだことを知っているのだろうか。
「…藤原さん。こんばんは」
「え?」
その声を聞いて心底驚いた。
お母さんと話していた男の人は、まさかの早川先生だった…。
「どうしてここに…」
「2日も休んでいるから心配ということで顧問の先生が来てくださったのよ。というか真帆、帰宅部じゃなかったの? 違う部に入っていたなんて。それすら知らなかったわ…」
「…言ってないからね」
早川先生は小さく会釈をした。
…会いたくなかったのに、家まで来るなんて。
自分の中にある複雑な感情が苛立ちとなって出てくる。
早川先生は何も悪く無いのに。
酷く当たってしまった。
「何で先生が家まで来るのですか。放っておいてくださいよ。私がどれだけ休もうが、先生には全く関係の無い事ですから!」
「真帆! そんな言い方…」
「良いです。お母様」
早川先生はお母さんに静止を促して言葉を継いだ。
「真帆さんをお借りしてもよろしいでしょうか? 少しお話したいことがあります」
「私は無い!!」
「構いません、どうぞ」
ちょっと、お母さん!!!
「話すことなんか無いよ!!!」
「お母様、ありがとうございます。お借りします」
誰一人として私の言葉に耳を傾けてくれない。
お母さんに小さく会釈をして、早川先生は私の腕を引っ張った。
自宅から少し離れた公園の駐車場に早川先生は車を停めていた。
先生は私の腕から手を離さない。
「藤原さん」
「……」
「藤原さん」
「……」
何度呼ばれても返事をしない。最低限の抵抗。
「………真帆さん」
「気安く呼ばないでよ!!」
「やっと反応してくれました」
「あっ」
早川先生は優しそうに微笑んだ。
「車に乗りますか? 嫌ならこの公園のベンチに座りましょう」
「…ベンチで」
「分かりました」
日が落ちて辺りは暗くなっている。
当然公園には誰もいなくて、私たち2人だけだった。
「藤原さん。まずは謝らせて下さい。本当に申し訳ございませんでした」
早川先生は私の前で土下座して謝った。
「…ちょ、やめて下さい。土下座何て本当に…」
「ごめんなさい、僕本当に…藤原さんのことが好きです。頑張って補習を受ける姿、僕の話をしっかり聞いてくれるその目。全てが好きすぎて、愛おしくて。あの日…感情が抑えきれませんでした」
七三分けの前髪が崩れ、地面に当たっている。
「正直…生徒に対してこんな感情を抱く日が来るとは僕自身、全く思っていませんでした。ごめんなさい。こんな気持ち悪い教師…校長先生に通告しても良いです。僕を解雇させて下さい」
「な……」
「解雇はすぐにでも出来ます。教師としてあるまじき僕を晒上げて下さい」
早川先生は頭を上げずに淡々と告げた。
……何それ。
苛立ちを通り越して怒りが湧き上がってきた。
「馬鹿じゃないの。…そんなの全く意味が分からない! 本当に悪いと思っているなら私に言わせるのではなくて、自己申告したら良いじゃないですか!! そう思うなら私に言わず、勝手に消えてくれたら良いのですよ!! 別に先生が居なくなっても痛くも痒くもないし、私に責任転嫁しないで!!」
早川先生は何も言わず、苦しそうに唇を噛んでいる。
私はもう、感情が抑えられない。
「馬鹿だよ、先生…馬鹿だよ…」
そんな早川先生の姿を見て、今度は涙が溢れて来た。
「大体、そんなの…私だって同罪ですよ。早川先生に抱き締められた時、全然嫌では無かったです。伊東先生に抵抗しろと言われましたけど…しませんよね。だって嫌では無いのですから。……先生のことが好きなのか今は分かりませんけど、嫌では無かったのは本当です。こんなの、同罪でしょう………!!」
「藤原さん…」
先生は土下座をしたまま顔を少し上げた。一筋の涙が零れる。
「伊東先生と早川先生が私を挟んで喧嘩するのも嫌です。早川先生に怒る伊東先生も、伊東先生に殴られた早川先生も…誰も報われません。……何で2人とも私なのでしょうか。普通の高校生活を送りたかったのに。どうしてこうなったの…。考えれば考えるほど吐き気がして、学校に行きたくなかった。私、伊東先生と早川先生に会いたくなかったのです!! なのに、家まで来るなんて…どういうことですか…」
自分でも何を言っているのか分からない。
そんな私の言葉を早川先生は小さく頷きながら聞いていた。
「追いつめていたようで…本当にごめんなさい。実は昨日、的場さんが数学科準備室に来たのです」
有紗…そういえば電話で言っていた。数学科準備室に行くって。
「その時伊東先生はいなくて僕だけだったのですけど、凄く怒られました。今日学校に来たら謝ろうと思っていたのですが休んでいたので…心配で家にお邪魔した次第です。…突然のことでごめんなさい。ただ、まさかお母様に内緒で休んでいたとは思っておりませんでしたが…」
「本当は、家を出るまでは学校に行く気だったんですけど…」
早川先生は土下座をしたまま申し訳なさそうにしている。何だか本当に可哀想になってきた。
「……もういいです。先生もベンチに座ってください」
「…すみません」
ベンチに座った早川先生の前髪もスラックスも砂だらけになっていた。
私は鞄からハンカチを取り出し、先生についた砂を無言で掃う。
「…藤原さん」
「………」
「ありがとうございます」
「…いえ。……早川先生。結局、伊東先生の暴力…通報したのですか?」
早川先生は一瞬驚いた顔をして視線を遠くに向けた。頬についているガーゼを撫でる。
「…しておりません。お互い和解しました。僕は暴力を通報しないし、伊東先生も生徒に私的な感情を抱いたことは言わないでいてくれるそうです」
「そうですか」
「転んだことにしているので、そういうことにしといてください」
「…分かりました」
早川先生に視線を向けずに答えた。
何だか、早川先生も伊東も子供みたい。
こんなの、子供の喧嘩と同じじゃない。
「藤原さん、今回のテストも数学以外は90点超えだったみたいですね」
「…何ですか、突然」
「いや…僕らのせいで藤原さんの勉強機会を2日も奪ってしまい、申し訳ございませんでした」
「別に…勉強が好きな訳でもありませんし。学校行かず自由に過ごせたので、楽しくて良かったですよ」
「…そうですか。部員のいない数学科準備室は非常に静かで…寂しかったですが」
「……」
あえて何も答えない。
本当、調子が狂う。
「…数学補習同好会、今後も継続するのですか?」
「…分かりません。僕は継続させたいです。最初はあんなに嫌だったのに、今や僕の一部になっています」
数学補習同好会。私も最初は嫌だったけど、今や当たり前になっている。
私の中でも一部になっているのかもしれない。
「………気が向いたら、数学科準備室覗きます」
そう言うと、早川先生の顔に少しだけ笑顔が浮かんだ。
「是非、お待ちしております」
笑顔にドキッとした自分に嫌気が差す。本当に自分の感情が分からない。
ただ…、と先生は言葉を付け足した。
「僕は藤原さんの気持ちを優先させたく思います。無理もさせたくありませんので、本当に行ける…って思った時に来てください。僕はいつでもお待ちしております」
「はい、分かりました」
早川先生は右手を差し出してきた。
握手だろう…そう思ったが、私は右手の人差し指を差し出す。
精一杯の、反抗。
ふふ、と笑った先生は優しく人差し指を握った。先生の手の温かさ伝わってくる。
「…帰りましょうか」
「はい」
早川先生は自宅まで一緒に歩いてくれた。
そしてお母さんに挨拶をして帰って行った。
「真帆…。思い悩んでいることがあるなら相談しなさい。学校だって、無理に行けとは言わないんだから。勝手に休んでどこかに行ったりしないで」
「…ごめんなさい。もう二度としません」
家の中に入りながらお母さんは私の頭を撫でてくれた。
土日休みも含めると4日ぶりの学校。
なんだか不思議と久しぶりな感じがした。
「真帆~!! もう大丈夫?」
「有紗、色々ごめんね」
「謝る必要はないの。真帆が来てくれて嬉しいよ」
金曜日に学校休むと有紗に連絡をしてからスマホの電源を入れるのを忘れていた。
自室に戻り電源を入れると…有紗からの鬼電履歴と莫大なメッセージの数々…!!! 急いで電話を掛けて、起こった出来事を全て話していた。
「しかし…早川先生が家まで行くとはね」
「びっくりしたよ…」
「で? 今日の同好会どうするの?」
「まだ決めてない。伊東のこともあるし…」
「そうよね」
早川先生とは話せたが、伊東とはまだだ。
今日は…帰ろうかなぁ。
「真帆、無理しない方がいいよ。帰った方がいい」
「本当は私も部活を休んで真帆と帰りたいけど、そうはいかないの。…ごめんね」
「謝らないでよ。その気持ちが嬉しいよ」
有紗は私に抱きついてきた。
「真帆好きー!」
「うん、私も」
有紗がいてくれるから、何があっても頑張れる。
「そろそろ帰るか…」
帰りは駅に行って電車で帰ることにした。
自宅前が何やら騒がしい。いつもと様子が違うようだ。
お母さんと男の人が何か話している。お父さんではないな…。
「…お母さん?」
恐る恐る近付いて声を掛ける。
私の声を聞いた2人は同時にこちらを向いた。
「あぁ、真帆! 今日どこ行っていたの!?」
お母さんが私の姿を見て道路まで飛んできた。
「学校行っていなかったってどういうことよ! 休みたいなら休むって言えば良いのに!!」
「ごめんなさい」
…ん?
謝ってから気付いた。何故休んだことを知っているのだろうか。
「…藤原さん。こんばんは」
「え?」
その声を聞いて心底驚いた。
お母さんと話していた男の人は、まさかの早川先生だった…。
「どうしてここに…」
「2日も休んでいるから心配ということで顧問の先生が来てくださったのよ。というか真帆、帰宅部じゃなかったの? 違う部に入っていたなんて。それすら知らなかったわ…」
「…言ってないからね」
早川先生は小さく会釈をした。
…会いたくなかったのに、家まで来るなんて。
自分の中にある複雑な感情が苛立ちとなって出てくる。
早川先生は何も悪く無いのに。
酷く当たってしまった。
「何で先生が家まで来るのですか。放っておいてくださいよ。私がどれだけ休もうが、先生には全く関係の無い事ですから!」
「真帆! そんな言い方…」
「良いです。お母様」
早川先生はお母さんに静止を促して言葉を継いだ。
「真帆さんをお借りしてもよろしいでしょうか? 少しお話したいことがあります」
「私は無い!!」
「構いません、どうぞ」
ちょっと、お母さん!!!
「話すことなんか無いよ!!!」
「お母様、ありがとうございます。お借りします」
誰一人として私の言葉に耳を傾けてくれない。
お母さんに小さく会釈をして、早川先生は私の腕を引っ張った。
自宅から少し離れた公園の駐車場に早川先生は車を停めていた。
先生は私の腕から手を離さない。
「藤原さん」
「……」
「藤原さん」
「……」
何度呼ばれても返事をしない。最低限の抵抗。
「………真帆さん」
「気安く呼ばないでよ!!」
「やっと反応してくれました」
「あっ」
早川先生は優しそうに微笑んだ。
「車に乗りますか? 嫌ならこの公園のベンチに座りましょう」
「…ベンチで」
「分かりました」
日が落ちて辺りは暗くなっている。
当然公園には誰もいなくて、私たち2人だけだった。
「藤原さん。まずは謝らせて下さい。本当に申し訳ございませんでした」
早川先生は私の前で土下座して謝った。
「…ちょ、やめて下さい。土下座何て本当に…」
「ごめんなさい、僕本当に…藤原さんのことが好きです。頑張って補習を受ける姿、僕の話をしっかり聞いてくれるその目。全てが好きすぎて、愛おしくて。あの日…感情が抑えきれませんでした」
七三分けの前髪が崩れ、地面に当たっている。
「正直…生徒に対してこんな感情を抱く日が来るとは僕自身、全く思っていませんでした。ごめんなさい。こんな気持ち悪い教師…校長先生に通告しても良いです。僕を解雇させて下さい」
「な……」
「解雇はすぐにでも出来ます。教師としてあるまじき僕を晒上げて下さい」
早川先生は頭を上げずに淡々と告げた。
……何それ。
苛立ちを通り越して怒りが湧き上がってきた。
「馬鹿じゃないの。…そんなの全く意味が分からない! 本当に悪いと思っているなら私に言わせるのではなくて、自己申告したら良いじゃないですか!! そう思うなら私に言わず、勝手に消えてくれたら良いのですよ!! 別に先生が居なくなっても痛くも痒くもないし、私に責任転嫁しないで!!」
早川先生は何も言わず、苦しそうに唇を噛んでいる。
私はもう、感情が抑えられない。
「馬鹿だよ、先生…馬鹿だよ…」
そんな早川先生の姿を見て、今度は涙が溢れて来た。
「大体、そんなの…私だって同罪ですよ。早川先生に抱き締められた時、全然嫌では無かったです。伊東先生に抵抗しろと言われましたけど…しませんよね。だって嫌では無いのですから。……先生のことが好きなのか今は分かりませんけど、嫌では無かったのは本当です。こんなの、同罪でしょう………!!」
「藤原さん…」
先生は土下座をしたまま顔を少し上げた。一筋の涙が零れる。
「伊東先生と早川先生が私を挟んで喧嘩するのも嫌です。早川先生に怒る伊東先生も、伊東先生に殴られた早川先生も…誰も報われません。……何で2人とも私なのでしょうか。普通の高校生活を送りたかったのに。どうしてこうなったの…。考えれば考えるほど吐き気がして、学校に行きたくなかった。私、伊東先生と早川先生に会いたくなかったのです!! なのに、家まで来るなんて…どういうことですか…」
自分でも何を言っているのか分からない。
そんな私の言葉を早川先生は小さく頷きながら聞いていた。
「追いつめていたようで…本当にごめんなさい。実は昨日、的場さんが数学科準備室に来たのです」
有紗…そういえば電話で言っていた。数学科準備室に行くって。
「その時伊東先生はいなくて僕だけだったのですけど、凄く怒られました。今日学校に来たら謝ろうと思っていたのですが休んでいたので…心配で家にお邪魔した次第です。…突然のことでごめんなさい。ただ、まさかお母様に内緒で休んでいたとは思っておりませんでしたが…」
「本当は、家を出るまでは学校に行く気だったんですけど…」
早川先生は土下座をしたまま申し訳なさそうにしている。何だか本当に可哀想になってきた。
「……もういいです。先生もベンチに座ってください」
「…すみません」
ベンチに座った早川先生の前髪もスラックスも砂だらけになっていた。
私は鞄からハンカチを取り出し、先生についた砂を無言で掃う。
「…藤原さん」
「………」
「ありがとうございます」
「…いえ。……早川先生。結局、伊東先生の暴力…通報したのですか?」
早川先生は一瞬驚いた顔をして視線を遠くに向けた。頬についているガーゼを撫でる。
「…しておりません。お互い和解しました。僕は暴力を通報しないし、伊東先生も生徒に私的な感情を抱いたことは言わないでいてくれるそうです」
「そうですか」
「転んだことにしているので、そういうことにしといてください」
「…分かりました」
早川先生に視線を向けずに答えた。
何だか、早川先生も伊東も子供みたい。
こんなの、子供の喧嘩と同じじゃない。
「藤原さん、今回のテストも数学以外は90点超えだったみたいですね」
「…何ですか、突然」
「いや…僕らのせいで藤原さんの勉強機会を2日も奪ってしまい、申し訳ございませんでした」
「別に…勉強が好きな訳でもありませんし。学校行かず自由に過ごせたので、楽しくて良かったですよ」
「…そうですか。部員のいない数学科準備室は非常に静かで…寂しかったですが」
「……」
あえて何も答えない。
本当、調子が狂う。
「…数学補習同好会、今後も継続するのですか?」
「…分かりません。僕は継続させたいです。最初はあんなに嫌だったのに、今や僕の一部になっています」
数学補習同好会。私も最初は嫌だったけど、今や当たり前になっている。
私の中でも一部になっているのかもしれない。
「………気が向いたら、数学科準備室覗きます」
そう言うと、早川先生の顔に少しだけ笑顔が浮かんだ。
「是非、お待ちしております」
笑顔にドキッとした自分に嫌気が差す。本当に自分の感情が分からない。
ただ…、と先生は言葉を付け足した。
「僕は藤原さんの気持ちを優先させたく思います。無理もさせたくありませんので、本当に行ける…って思った時に来てください。僕はいつでもお待ちしております」
「はい、分かりました」
早川先生は右手を差し出してきた。
握手だろう…そう思ったが、私は右手の人差し指を差し出す。
精一杯の、反抗。
ふふ、と笑った先生は優しく人差し指を握った。先生の手の温かさ伝わってくる。
「…帰りましょうか」
「はい」
早川先生は自宅まで一緒に歩いてくれた。
そしてお母さんに挨拶をして帰って行った。
「真帆…。思い悩んでいることがあるなら相談しなさい。学校だって、無理に行けとは言わないんだから。勝手に休んでどこかに行ったりしないで」
「…ごめんなさい。もう二度としません」
家の中に入りながらお母さんは私の頭を撫でてくれた。
土日休みも含めると4日ぶりの学校。
なんだか不思議と久しぶりな感じがした。
「真帆~!! もう大丈夫?」
「有紗、色々ごめんね」
「謝る必要はないの。真帆が来てくれて嬉しいよ」
金曜日に学校休むと有紗に連絡をしてからスマホの電源を入れるのを忘れていた。
自室に戻り電源を入れると…有紗からの鬼電履歴と莫大なメッセージの数々…!!! 急いで電話を掛けて、起こった出来事を全て話していた。
「しかし…早川先生が家まで行くとはね」
「びっくりしたよ…」
「で? 今日の同好会どうするの?」
「まだ決めてない。伊東のこともあるし…」
「そうよね」
早川先生とは話せたが、伊東とはまだだ。
今日は…帰ろうかなぁ。
「真帆、無理しない方がいいよ。帰った方がいい」
「本当は私も部活を休んで真帆と帰りたいけど、そうはいかないの。…ごめんね」
「謝らないでよ。その気持ちが嬉しいよ」
有紗は私に抱きついてきた。
「真帆好きー!」
「うん、私も」
有紗がいてくれるから、何があっても頑張れる。