青春は、数学に染まる。
翌日、3限目の数学。
挙動不審すぎる教師。
挙動不審すぎるでしょ。
誰かぁ! この数学教師、挙動不審です!
数学の授業。早川先生はいつも通り…を維持しているようで、何か違う。私とは不自然に目を合わせず、授業の進行もなんだかぎこちない。
…あ、チョーク折れた。
あの人が私の彼氏だなんて。
面白すぎて、思わず私の顔も少しにやける。
「ちょっと真帆! 何あれ!」
授業が終わると同時に有紗が私の元へ飛んできた。
小声でテンション高めに声を上げる有紗。
やっぱり気付いていたのね。
まだ教壇で後片付けをしている早川先生は、私の方を見ながら唇を少しだけ尖らせていた。授業中、頑なに目を合わせようとしなかったのに。
というか! そんな顔、ここでしないでよ!
「2人とも、昨日何かあったな?」
ニヤニヤしながら肩を突いてくる。有紗にはバレバレだ。
「うん…まぁそうなの。またお昼に話すね」
「待ちきれない!!」
有紗はジャンプしながら私を抱き締めた。
「さて、この時間を待っていました!」
最早定番となった昼休みの報告会。冬になると流石に寒い。コートを着て、マフラーまで巻いて完全防備。
「まぁ、まずね。お付き合いしましょうって言って貰いました!」
「マジか! おめでとう! おめでとう!」
ふふふ、と意味深な笑みを浮かべながら、昨日あったことを有紗に話す。その間、有紗はニヤニヤしながら聞いていた。
「ただ、昨日の帰りは普通だったの。だからさ、さっきの授業が何であんな感じだったのか全然理解できなくて」
「そりゃあれだよ…。家帰って色々考えた結果じゃない?」
1人になって自分の言動を思い返すと、なかなか恥ずかしくて後悔したり思いや悩んだりするものよ。と付け足した。
「あそこまで挙動不審だと、心配になるけどね」
「そんな早川先生を、真帆が放課後にフォローするのよ」
有紗は立ち上がってぴょんぴょんし始めた。
感情が溢れて止まらないみたい。
「とはいえ、今日から伊東が復帰しているはずだからさ。放課後にどうこうはもう出来ないよ」
「あ。そうか、伊東先生今日からかぁ」
出勤しているはず。何せ伊東とは接点が無いから。
普通に生活していると遭遇することは殆ど無い。
「伊東先生が真帆のこと気になっていたっていう話はどうなったの?」
「…どうもなっていないよ。それが本当か、今はもう分からない。けど伊東のことは良いの。もう知らない」
「早川先生って妬くの?」
……昨日の感じ、妬くよね。
「うん…妬くね」
「そりゃ大変だ! 数学補習同好会。波乱の幕開け!」
「嫌すぎる」
そう言えば同好会のこと忘れていたな。
どうせ補習を受けるし、早川先生と私に2人だけなら同好会は気がする。
今後はどうするのか、放課後行った時に聞いてみよう…。