青春は、数学に染まる。
昼休み。
有紗はいつになく怒りに満ち溢れていた。
「早川…。何よ、体調不良って!!!!! お前が撒いた種だろうが!!!」
「落ち着いて。私はもう大丈夫だから」
「真帆が大丈夫でも、私は全然大丈夫じゃない!!!」
食欲が無い私は、自動販売機で買ったミルクティーをランチにすることにした。有紗はサンドイッチを食べている。
「…はぁ。乗り込みたい。数学科準備室」
「行かないで」
明日、早川来たら乗り込もうかな…と物騒な有紗。お願いだからやめてください。
「まぁ、本来あるべき姿に戻っただけだよ。教師と生徒、ただそれだけ」
「真帆…」
「ただ…私は自分が思っていた以上に早川先生の事を好きになっていたみたい。おかしいね…」
言っていて苦しくなって涙がこみ上げてくる。感情のコントロールが全く出来ない。どうしたものかな…。
「全然おかしくなんか無いよ。最初こそ早川の片思いだったにしても、その後ちゃんと両思いになって付き合っていたんだから…」
こうしている時でも早川先生の顔が頭に浮かぶ。
優しく微笑んでいる、先生の顔。
「同好会はどうなるのかな?」
「分からない。けれど、私は当分行かないかな。来週、再試があるけど…」
「それって本当に行かなくても良いの?」
「…いや、まぁ。再試に行かないのは良くないと思う。分かっている。けれど…先生のせいだから」
早川先生に、会いたくない。それに尽きる。
それから1週間の間、数学科準備室には行かなかった。
早川先生とは授業で顔を合わすだけで特に会話するわけでも無い。先生も悲しそうな顔をしているけど、自分から切り出したことなのに。何故そんな感じなのか意味が分からない。
神崎くんは変わらず付き合おうと絡んでくる。
伊東は廊下ですれ違う時、必ず大丈夫かと心配して声を掛けてきてくれるようになっていた。