青春は、数学に染まる。

覚悟


今日1日、とてもあっという間だった。


真っ暗闇の中、先生は車を走らせる。





「寝ていても良いですよ。道中は長いです」
「折角の時間なのに。寝るなんて勿体無いです」


時刻は20時を回っていた。帰ったら22時を過ぎるくらいかな。
お母さんにはちゃんと報告しているから家は何も問題無い。


「今日はどうでしたか、楽しかったですか?」
「はい。とても楽しかったです。先生、ありがとうございました」
「喜んで貰えて何よりです」

先生は嬉しそうな顔をした。



その表情が好き。



最初こそ伊東に一目惚れして、早川先生何て眼中にも無かったが…。

今はもう、早川先生のことが好きすぎる。






イルミネーションを見て帰る時、少しお土産屋へ寄った。

そこで見つけた可愛いストラップ。
私が買おうかと悩んでいると、先生が買ってくれた。しかも、先生自身も色違いを買った。

私はピンク。先生は緑。


初めての、お揃い。


そのストラップを改めてじっくり見る。本物の四葉のクローバーが入っていて可愛い。


「これ…先生が付けるには、少し可愛すぎませんか?」
「そんなことはありません。僕は子供だから大丈夫です」

どういうこと。
先生は立派な大人ですよ。精神は子供だけれども…。

「私、通学鞄に付けます」
「ふふ、良いですね。僕は数学科準備室の机に飾っておきます」
「お揃いなのがバレませんか?」
「そんなに敏感な人いますかね?」

伊東とか…? 敏感かどうかは知らないけど。

「何だか、先生と私だけの秘密って感じがしてドキドキします」
「また準備室でキスしましょうね」
「馬鹿!!」

先生は余裕そうな表情で笑った。






帰りの時間経過は早く、気が付くと家の付近まで帰って来ていた。



早川先生は車を家の前を通り過ぎ、近くの公園に停車させた。
あの日…私が学校をサボった日に早川先生とお話した場所。


「今度、真帆さんの親御さんにご挨拶したいと思います」
「え、唐突!!」
「唐突ではありません。ずっと考えていました。教師である僕が、親御さんにとって大事な娘さんとお付き合いすること、やっぱり黙っておくことはできません」

先生は真剣な眼差しでこちらを見ている。


親に挨拶か…。考えた事が無かった。


「ただ、今日はもう遅いので…。また出直します」
「…はい。先生、ありがとうございます」

先生は微笑んで、私を軽く抱き寄せた。

「僕の方こそ、ありがとうございます」

至近距離で見つめ合い、自然とお互いが唇を重ねた。
優しく重ねるだけのキスから、先生はそっと舌を入れてきて、深いキスへと移行する。

気持ち良すぎて溶けそう。全身の力が抜けていくのが分かる。

「…真帆さん。好きです」
「私も、裕哉さん…好きです」


先生の名前を呼ぶと、先生の動きはより一層激しくなる。




好きすぎてどうしようもない。
そんな気持ちで胸がいっぱいになっていた。









 
 
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