青春は、数学に染まる。

最後の別れ


1月は行く。2月は逃げる。3月は去る。
本当にその通りで、カレンダーはあっという間に3月になっていた。

1年生で居られるのも、あと(わず)か。




3年生は卒業した。
退学した青見先輩について何も言わなくなった有紗を少し心配しつつも、元気な様子に少し安心する毎日。



早川先生とはバレンタインデーに会って以来会うことなく、連絡はメッセージや電話で行っていた。

授業中に見る先生の顔には疲労感が現れていて心配になることも多い。しかし、電話での先生の声はいつも通りだった。無理をしていなければ良いけれど。



有紗も早川先生も。
大切な2人のことが本当に心配。





「ここの中庭、梅も咲くんだね」
「本当。綺麗だね」


昼休みの中庭。
いつものベンチで今日も有紗と過ごしていた。



白とピンクの梅の花が咲き誇っている。
夏は緑葉、秋は紅葉が綺麗だった。冬には葉が落ち、そして春にまた花を咲かせる。

この学校の中庭は本当に素敵だなと改めて実感した。




「そういえば有紗。この前、神崎くんからライブのチケットを貰ったこと覚えている?」
「覚えているよ。結局どうするの、行くの?」
「行くことにしたよ。先生とも話したからさ、有紗も行こうよ」
「先生行きたがらなかった?」
「そこは理解してくれたみたい。2回目に聞いた時は行くって言わなかったよ」

そう言うと有紗は笑った。

「それは、強がりだね」
「ね。そう思うでしょ?」

強がりでもなんでも、早川先生が私の意思を尊重して変わろうとしてくれていることが嬉しい。

「まぁ、分かった。なら一緒にライブに行こう。私、神崎のこと気に入らないけど」
「ふふ。ありがとう、有紗」


3月の第3土曜日。
駅前のライブハウスで行われる軽音部のライブ。
先生には言えないけど、ほんの少しだけ楽しみだった。





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