青春は、数学に染まる。

期末

7月。それはもう暑いこと。

制服も夏服になった。正直、この夏服が可愛くてこの学校を選んだ。冬服はセーラー服で、夏服はブラウスにリボン、そしてベスト。学校カラーのえんじ色のリボンが白いブラウスに良く映える。



「きゃー! 伊東ちゃん!!」
「ちゃん。じゃねぇよ。先生な」

教室移動中、渡り廊下で伊東先生と3年生の先輩が話していた。…というか、囲まれている?


「伊東先生は本当に人気だね…」

有紗と遠目に見る。先輩方、その人凄く性格悪いですよ。

それとも先輩方はそれも承知の上なのかな。だとしたら大分変わり者だけれども…。




「あ、藤原!」
「えっ!?」


見過ぎたかもしれない。伊東先生がこちらに気付いてしまった。


「せんせ。突然どうしたの? 藤原って誰〜?」
「…真帆、走ろう」
「うん」


私と有紗は走ってその場から逃げた。


「あ。ちょっと!」






久しぶりに走った…。息切れが凄い。
その点有紗は何とも無さそう。さすが空手部。


「気付かれるとは思わなかった…」
「先輩怖いよね。目を付けられたら大変」

特に、伊東先生を取り囲んでいる人たちはより一層怖そう。


「しかし、伊東先生覚えているね。真帆のこと!一度会っただけなのに!」
「それは多分、赤点で印象が強かったからじゃない?」


初対面のインパクトとしては100点満点だったかもしれない。


しかし、”伊東ちゃん”って。先輩に向かって失礼だが、阿呆らしい。


「何の用だったのかね?」
「さぁ。またからかうだけじゃないかな?」



知らないけど。
そもそも私、伊東先生のことは何も知らないけど。





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