御曹司は高嶺の花に愛を刻む
「騙されてんじゃねーの?」
騙されてる?
陽平が?
私を?
再び、警報が鳴る。
「岩崎君。私、帰るね!お疲れ様」
「お、おい!!」
そして、何故だか抱きしめられた。
今日は、デザイン部の定時退勤日だ。
もう、フロアにはいつの間にか私達だけになっていた。
「は、はなして!」
いやだ!
強引なイケメンは本当に苦手だ。
陽平は大丈夫なのに。
「俺、お前が好きだ。」
はい?
む、むり!!
陽平!!助けて!!
いやだいやだ!
警報が鳴り響く。
やっぱり、壊れてない。
「はなしてってば!!」
思いっきり身体を捻って振り解いた。
陽平以外に触られたくない。
「ごめん。岩崎君。そういう目で見てない。
今後も、もうやめて。お願い。
お互い、働きづらくなるでしょ?
今のは無かったことにするから。
んじゃ、お先に失礼します」
そう言って、ペコっと頭を下げてフロアを後にした。
最後に岩崎君が、小さな声で
「悪かった」
と言っていたけど、私は振り向かずに足を早めた。